アメリカのスーパーマーケット業界誌最大手のスーパーマーケット・ニュース(Supermarket News)社の傘下企業で、50年以上にわたり世界中の食品サービス業界に関する調査およびコンサルティングを行っているテクノミック(Technomic)社が、アメリカ国内の食品小売企業における、1店舗あたりの「調理済み食品/prepared foods」の平均売上高をまとめたランキングを発表したのでご報告します。
ランキングトップ10
順位 | 企業名 | 2023年 店舗数 | 1店舗 平均 |
---|---|---|---|
1 | ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market) | 516 | 410万ドル |
2 | ミツワ・マーケットプレイス(Mitsuwa Marketplace) | 12 | 400万ドル |
3 | Hマート(H Mart) | 80 | 400万ドル |
4 | コワルスキー・マーケット(Kowalski’s Markets) | 11 | 390万ドル |
5 | シーフード・シティ(Seafood City) | 30 | 380万ドル |
6 | PCCコミュニティ・マーケット(PCC Community Markets) | 16 | 380万ドル |
7 | ブリストル・ファーム(Bristol Farms) | 13 | 360万ドル |
8 | ウェグマンズ(Wegmans) | 111 | 340万ドル |
9 | エルーワン(Erewhon Market) | 10 | 320万ドル |
10 | エイチ・イー・バット(H-E-B) | 360 | 290万ドル |
解説
2020年以降、アメリカ全土における外食費は急騰し続けており、他のカテゴリーのインフレが緩和されていく中でも、外食費の高騰は続いています。
2020年2月以降、外食関連の消費者物価は21.2%上昇しており、2023年12月の調査では、レストラン経営者の82%が今後もメニュー価格を値上げすると回答したということです。
価格高騰により、アメリカ国民の外食離れが進む中、食品小売企業は店舗における調理済み食品を強化し差別化を図る動きが顕著となりました。
このような状況の中で、調理済み食品というカテゴリーにおいて、最も消費者からの支持を得たトップ10社の顔触れは上記ランキング表の通りです。
トップのホールフーズをはじめ、7位のブリストル・ファーム、8位のウェグマンズ、10位のエイチ・イー・バットといったお馴染みの企業がランクインしている一方で、2位にミツワ・マーケットプレイス(日系)、3位にHマート(韓国系)、5位にシーフード・シティ(フィリピン系)といったアジア系のスーパーチェーンがランクインしていることが特徴です。
これらのアジア系チェーンの大きな特色は、体験型の広大なフードコートを設けていることで、店舗数は少なくても出店地域で絶大な支持を得ていることが分かります。
例えばミツワ・マーケットプレイスは、どの店舗でも広大なフードコートがあり、伝統的なアジア料理を提供する小規模な屋台が立ち並び、ライス、スープ、その他のサイドメニューがセットになったメニューなどがリーズナブルな価格で提供されています。
注文を受けてから作るラーメン、寿司、刺身、弁当、フライドチキン、チキンカツ、餃子、おむすび、丼などがその一例で、抹茶や黒ゴマなどのフレーバーを含むソフトクリームも、人気のフードサービスとなっています。
今回トップになったホールフーズに関しては、直近(10月3日)の弊社トレンドピックアップ記事「ホールフーズが自社ブランド商品を値下げ」(http://www.ryutsu-shisatsu.com/pickup241003)でも紹介しましたが、かつてWhole Foodsという店舗名からWhole Paycheck(給料全額が飛ぶ)と揶揄されるくらい商品価格の高さで悪名高かった同社が、2017年にアマゾン傘下となって以降そのイメージの払しょくに力を入れて来ており、商品品質を維持しつつ低価格化への取り組みを着実に実行したことが今回の結果に結びついたものと思われます。
また、オハイオ州に拠点を置く小売店舗に関するコンサルティング・サービスを提供しているザ・ストアズ・コンサルティング・グループ(The Stores Consulting Group)によると、ホールフーズは農場から店舗までのサプライチェーンを迅速化し、各市場の人口統計に合わせた品揃えを徹底することに成功しており、より高品質な調理済み食品の提供ができていると報告しています。
11位以下の主な企業5社のランキング
最後に、11位以下の主な企業5社のランキングは次の通りでした。
順位 | 企業名 | 2023年店舗数 | 1店舗平均売上 |
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11 | ゲルソンズ(Gelson’s) | 27 | 280万ドル |
14 | スチュー・レオナルド(Stew Leonard’s) | 8 | 260万ドル |
17 | ハイヴィ(Hy-Vee Supermarkets) | 292 | 240万ドル |
39 | パブリクス(Publix) | 1,360 | *** |
40 | ハリス・ティーター(Harris Teeter) | 263 | *** |
米国農務省(USDA)の最新のレポートでは、2025年の食品価格は1.6%上昇すると予測されている一方で、外食価格は3.1%の上昇が見込まれるなど、今後も外食価格の高止まりは続いていくと予測されており、リーズナブルな価格で、より高品質な調理済み食品を購入できる食品小売企業に注目して行きたいと思います。
(2024.10.21配信/記事作成:イオンコンパス(株)海外仕入部)