2022年2月の弊社メールマガジンにて、英国を拠点に顧客データ分析によるマーケティングサポートを行っているグローバル企業であるダンハンビー(Dunnhumby)社による「2022年!アメリカ人が好むグロサリーストアランキング」の結果をご報告しました。
今回7回目となる「好きな小売企業指標~Retailer Preference Index(RPI)」の2024年版が発表されたので、改めてご紹介します。
評価項目(カテゴリー)
アメリカ国内10,000世帯を対象にしたアンケートで、アメリカを代表する主要65のグロサリー小売企業の中で、対象の世帯が最も評価する(好きな)企業を選択した結果を集計したもので、評価基準(カテゴリー)となったのは以下の項目です。
- 価格、販促活動、リワード(見返り)
- 品質
- スピードと便利さ
- デジタル化への取り組み
- 店舗運営
最新トップ10ランキング
上記5つのカテゴリーを総合評価した最新のトップ10ランキングは以下の通りです。(参考のため2022年度、2023年度の順位も右欄に追記しております)
Retailer Preference Index (RPI) 2024
2024年順位 | 企業名 | 2022年度順位 | 2023年度順位 |
---|---|---|---|
1 | H-E-B | 2 | 1 |
2 | アマゾン | 1 | 3 |
3 | コストコ | 9 | 2 |
4 | マーケット・バスケット | 3 | 6 |
5 | サムズ・クラブ | 8 | 5 |
6 | ウェグマンズ | 4 | 4 |
7 | アルディ | 6 | 12 |
8 | ショップライト | – | – |
9 | ウォルマート・ネイバーフット・マーケット | 10 | 14 |
10 | ウォルマート・スーパーセンター | 13 | 15 |
その他主要企業として11位パブリクス、12位ターゲット、15位クローガー、16位トレーダー・ジョーズ等がランクインしました。
トップにランクされたのはテキサス州を拠点とするH-E-Bで、昨年に続いて2年連続のトップとなりました。H-E-Bは、ダンハンビー社の「好きな小売企業指標~RPI」ではじめて1位を3度獲得した食品小売企業となったということで、アマゾンとトレーダー・ジョーズの2回を上回る結果となりました。
H-E-Bはメキシコにも進出していますが、アメリカ国内ではテキサス州のみでの店舗展開をしている完全なリージョナルチェーンでありながら、全米の世帯を対象にしたランキングでトップの座に3度も選ばれるというのは画期的なことと言えます。
H-E-B評価項目別順位
H-E-Bは総合ランキングで1位となりましたが、それぞれの評価項目(カテゴリー)別の順位は次の通りです。
評価項目(カテゴリー) | 順位 |
---|---|
価格・販促・リワード | 10位 |
品質 | 8位 |
スピード・便利さ | 39位 |
デジタル化 | 6位 |
店舗運営 | 32位 |
御覧の通り、いずれのカテゴリーでもトップに立っていないのにも関わらず、総合ランキングで1位に選ばれたということは、企業としてのバランスが優れているということです。
アマゾン評価項目別順位
ちなみに今まで1位に2度選ばれている企業の一つであり、2022年度の1位だったアマゾンのそれぞれの評価項目における順位は次の通りです。
評価項目(カテゴリー) | 順位 |
---|---|
価格・販促・リワード | 27位 |
品質 | 35位 |
スピード・便利さ | 12位 |
デジタル化 | 1位 |
店舗運営 | 55位 |
アマゾンはデジタル化の分野で突出した結果となっているのはさすがですが、それ以外の項目ではいずれも2ケタ台の順位となっています。
各評価項目トップ企業
参考のため、それぞれの評価項目でトップになった企業は以下の通りです。
評価項目(カテゴリー) | トップ企業 |
---|---|
価格・販促・リワード | マーケット・バスケット |
品質 | ウェグマンズ |
スピード・便利さ | フェアウェイ |
デジタル化 | アマゾン |
店舗運営 | コストコ |
ダンハンビー社は2024年の米国食料品小売市場の売上高の伸びは2023年の2.5%から大きく下がって、21世紀になって最低ラインの0.5%~1.5%と予測しています。 これは国民の可処分所得の鈍化、貯蓄率の低下、債務の増加等により、消費者にとって経済的逆風が強まりつつあることが起因しているということです。
しかし、このような環境下でもH-E-Bは常に顧客を知り、顧客のニーズの把握に積極的に取り組み、デジタル化への投資を進めることで顧客の利便性の向上を図ると同時に、地元密着仕入れによる高品質な食料品を低価格で提供し続けるなどリージョナルチェーンの優位性を背景に高評価を得ることに成功しました。
今回のランキングにはリージョナルチェーンとして4位のマーケット・バスケット、6位のウェグマンズ、8位のショップライト等がランクインしています。
因みにマーケット・バスケットについては、2022年11月のメールマガジン「2022年アメリカのインフレ下で信頼される小売企業」で取り上げているので、再読していただけたらと思います。
国土が広大なアメリカでは、全50州に店舗を展開しているスーパーマーケットチェーンはウォルマートとターゲットの2社だけですが、ホールフーズ(43州)、トレーダー・ジョーズ(43州)、クローガー(39州)、アルバートソンズ(34州)、アルディ(30州)等も全国展開を目指した店舗拡大を続けていることからナショナルチェーンと位置付けることができるでしょう。ただ、殆どのスーパーマーケットチェーンは地域性を重視したリージョナルチェーンです。
これからも様々な特徴を持った小売企業に焦点をあてていきたいと思います。
(2024.2.22配信/記事作成:イオンコンパス(株)海外仕入部)