アメリカにおける食料品価格は、2022年8月に1979年5月以来最大の前年比11.4%増を記録し、9月も前年比で11.2%増と極めて高いインフレ状態が続いています。
アメリカの食品小売業団体である食品マーケティング協会(FMI – The Food Marketing Institute)の最新(8月)の消費者トレンドに関する調査では、61%の消費者が値上がりの続く食料品価格について非常に憂慮しているという結果が出ており、2月時点の調査結果から8%のアップとなりました。
更に回答者の実に90%が食料品の買い控えを検討していると回答しています。
このような状況のなか、世界的顧客データサイエンス企業のダンハンビー(Dunnhumby)社が「高インフレ下で消費者から最も好まれている食品小売企業(Inflation Retailer Preference Index)」についての調査結果をまとめました。
この調査は、ダンハンビー社が2022年6月までに約18,000人の消費者を対象に行い、長引くインフレ下で消費者にとって最も好意的な企業をアメリカの代表的食品小売企業69社から選ぶというものです。
食品価格が高騰する中、日常生活を維持するために必要な食料品を購入するうえでの主な評価ポイントは以下の通りです。
・手頃な価格設定
・買い物のし易さ
・商品、サービスの質
・オンライン対応力
・在庫の豊富さ
上位15社は次の通りです。
順位 | 企業名 |
---|---|
1 | マーケット・バスケット(Market Basket) |
2 | アルディ(Aldi) |
3 | ウィンコ・フーズ(Winco Foods) |
4 | グロサリー・アウトレット(Grocery Outlet) |
5 | セイブ・ア・ロット(Save A Lot) |
6 | リドル(Lidl) |
7 | ダラー・ゼネラル(Dollar General) |
8 | フード・4・レス(Food4Less) |
9 | ファミリー・ダラー(Family Dollar) |
10 | コミサリー(Commissary) |
11 | プライス・ライト(Price Rite) |
12 | エイチ・イー・バット(H-E-B) |
13 | フェアウェイ(Fareway) |
14 | コストコ(Costco) |
15 | ウォルマート・ネイバーフット・マーケット(Walmart Neighborhood Market) |
今回アルディをはじめ、アメリカを代表するディスカウンターを差し置いてトップに選ばれたのは、マーケット・バスケット(Market Basket)でした。
1917年創業の同社はマサチューセッツ州を拠点に、メイン州、ニューハンプシャー州およびロードアイランド州で約90店舗を展開している低価格志向のリージョナル・スーパーマーケットチェーンです。もともと地元密着度の非常に高い企業で、常に地元の消費者に寄り添う経営を続けています。
ダンハンビー社の調査報告より、食品価格が高騰している中、マーケット・バスケットは最も顧客が頻繁に来店している企業であると評価されています。
顧客だけでなく、従業員や取引先を重要視し、お金儲けより人が大切だという経営を貫いていた当時のCEOが、売上を最優先とする株主により2014年に解任されると、従業員だけでなく、取引先や地元消費者等が一致団結してCEOを復職させることに成功したことから、マーケット・バスケットは「奇跡のスーパーマーケット」と呼ばれており、実際に書籍も出ている有名な食品小売企業です。
今回のランキングはダンハンビー社がまとめている、好きな小売企業インデックス(Retailer Preference Index)のインフレ特別バージョンになりますが、従来のインデックスでもマーケット・バスケットはアマゾン、H-E-Bに次いで3位に入っています。
日本での知名度は低くても、地元密着で高く評価されている小売企業はたくさんあります。これからもそのような企業をご紹介していきたいと思います。
(2022.11.9配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業戦略部)