今回は2019年10月に投稿した「ビッグ4に黄色信号!?英国食品小売企業最新マーケットシェア」以来、約3年ぶりに英国の食品小売の最新状況についてご紹介いたします。
3年前の記事では、ドイツ生まれのハード・ディスカウントチェーン2社「アルディ」と「リドル」の攻勢により、英国食品小売市場にそれまで君臨していた「ビッグ4」と呼ばれる上位4社が軒並みシェアを落としているという内容でした。かつては、ビッグ4の市場シェアは8割を超え、英国食品小売市場は超寡占状態でしたが、3年前の時点のシェアは67.2%まで下がり、その後もアルディとリドルの躍進は続いており、ビッグ4の一角に迫る勢いとなっています。
英国の市場調査会社大手カンター・ワールドパネル(Kanterworldpanel)社が発表した2022年7月10日までの12週間の売上による市場シェアは以下の通りです。
上位4社によるシェアは65.1%まで落ちてきており、更に4位のモリソンズと5位のアルディの差が、3年前は1.8%だったものが今回僅か0.3%にまで縮まりました。
恐らく数か月以内に長年続いてきた英国ビッグ4による市場寡占の構図に終わりが来るものと思われます。
ちなみに10年前のビッグ4による市場シェアは76.5%でした。
当時7位と8位だったアルディとリドルが10年後にコープ、ウェイトローズを抜いて4位と5位に躍進しました。
アルディはイギリス国内にて950店舗以上を展開しておりますが、今年に入りロンドン市内南東部のグリニッジにて同社初のレジ無し店舗ALDI SHOP & GOをオープンしました。
アルディのモバイルアプリにクレジットカード情報を同期し、店舗入り口ゲートでスキャンすることで入店することができます。そのあとは欲しいものを手に取りそのまま退店することで自動的に精算が終了するものですが、アマゾン、テスコ、セインズベリー等が展開するレジ無し店舗に対抗するもので、デジタルを駆使した最先端のショッピング体験の分野でも力を入れています。
2022年7月の英国の食品小売価格は9.9%のインフレ率を記録しており、2008年に前述のカンター・ワールドパネル社が統計を取り始めてから2番目の高さということです。こうした背景もあり、低価格で高品質な食料品を取り扱うアルディとリドルへの注目の高まりを見せる中で、現在英国人の3人に2人はこの2社のどちらかで買い物をしているということです。
シェアトップのテスコがアルディとリドルに対抗するため、2018年から導入したハード・ディスカウント業態店舗のジャックス(Jack’s)は、13店舗まで出店したものの今年に入って7店舗を閉鎖、6店舗を通常のテスコ店舗に変えたということです。自社ブランド商品を90%以上持ち、長年のディスカウント業態での経験を持つアルディとリドルと同じ土俵で戦うのは無理があったようです。
今後も英国をはじめ欧州の流通事情について、定期的に注目していきたいと思います。
(2022.8.5配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業戦略部)