これまで日本にはあまりなじみのなかった「ブラックフライデー(Black Friday)」ですが、最近は日本でも耳にするようになりました。ブラックフライデーは米国の感謝祭(サンクスギビングデー)からきた慣習ですが、現在は欧州の小売業にも広がっています。日本では、年末商戦前の新たなセールとして、取り入れる企業も出てきました。小売業のイオンでは、そのまま「ブラックフライデー」として、11月末のセールを実施します。また、東京・上野のアメ横では、一足早く「上野アメ横ウェルカムモール大感謝祭」が、11月19日~20日に開催されます。
米国では、サンクスギビングデー翌日の「ブラックフライデー」がクリスマスを控えた年末商戦の皮切りの日であり、一年のうちで最大のセールを実施する日でもあります。
ブラックフライデーという呼び名の由来は、「この日一日で、赤字店舗の売り上げが黒字転換するほど跳ね上がる」規模のセールを行うところからきています。元々は祝日翌日の金曜より行われていたセールも商戦が年々激化し、前倒しで前日の木曜からスタートする店も増えました。
また、米国ではブラックフライデー当日に店舗でショールーミングを行ったネットユーザーが、オンラインで比較検討した後に購買行動を行うことから、オンラインではサンクスギビングデー連休明けの月曜日が一年のうちで最も売り上げが高くなる日となっています。そうした現象に由来し、連休明けの月曜日は「サイバーマンデー(Cyber Monday)」とも呼ばれます。
サイバーマンデーの売上は年々増加しており、ワシントン・ポストによると、今年は昨年の約31億ドルから約4億ドル増加の約35億ドルの売上が見込まれています。また、11~12月のホリデー商戦の約17%がオンライン利用によるものだと言われています。こうした、オンライン需要を取り込むため、小売業各社は様々な対抗策を打ち出しています。
米国最大の家電量販店であるベストバイ(Best Buy)や、ターゲット(Target)はそれぞれのオンラインショップで商品を購入した場合、送料を無条件で無料にすると発表しています。また、ターゲットは同社のオンラインアプリである「カートウィール(cartwheel)」専用の割引を実施するなど、アマゾンへの対抗策を打ち出しています。米国小売業最大手のウォルマート(Walmart)は、オンラインショップでの送料は通常通り、50ドル以上の購入を条件にしています。その代りに、オンラインではブラックフライデーに先駆け、既に一部商品を特別価格で販売しています。また、ウォルマートは店舗での販売も強化するため、臨時従業員である「ホリデーヘルパー(Holiday Helper)」を導入します。ホリデーヘルパーはレジや、レジ待ちをしている顧客の買い忘れた商品を取りに行くなど、顧客が混雑する店内でも気持ち良くスムーズに買い物ができるように、臨機応変にサポートします。アマゾンなどのオンラインショップに対抗するため、ブラックフライデーのセールのあり方が米国では大きく変革期を迎え、各社の試行錯誤の取り組みが感じられます。
また、11月24日の感謝祭当日は家族と過ごす風習があり、SM各社は感謝祭の夕食用の食料品販売に力を入れます。感謝祭の定番料理であるターキー(七面鳥)などを求める買い物客の需要を取り込むため、SM企業にとっても大事な日なのです。
日本では始まったばかりのブラックフライデー商戦ですが、今後日本でも、実店舗を持つ小売業が次々と参入するような大型商戦になるのか、注目です。