2020年注目企業!グロサリー・アウトレット

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昨年12月配信のメールマガジン「2019年米国小売総括&年末商戦速報」にて、アメリカにおける小売店舗の閉鎖が記録的に増えてきているとご報告しましたが、昨年1年間だけで結果的に9,300店舗以上の店舗が閉鎖されたと、アメリカ小売り業界シンクタンク大手のコアサイト・リサーチ(Coresight Research)社が発表しました。

しかし、このような環境下でも堅調に店舗数を伸ばしている業態の一つとして、ハード・ディスカウント業態があります。同業態はドイツ発のアルディとリドルの2社が代表的な企業であり、アメリカ進出の状況は過去のメールマガジンでも何度かご紹介してきました。

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米国アルディの快進撃!

米国アルディの快進撃!

ドイツ生まれのハードディスカウンターであるアルディ(ALDI)が、アメリカ・アイオワ州に初進出をしたのが1976年。 それから40年余りの時を経て、今では全米で1,800店舗強を展開し、最新の全米小売業協会による「全米小売業トップ100ランキング」ではメイシーズ(Macy’s)を抜いて17位となるなど、アメリカを代表する巨大スーパーマーケットチェーンとなりました。 また、昨年から53億ドルを投じて既存店の大改装と新店舗の拡大を進めており、2022年までに更に700店舗を追加し、トータル2,500店舗まで拡大する計画とのことです。 計画完了後には店舗数でウォルマート(Walmart)とクローガー(Kroger)に次いで全米第3位になるものと予想されております。 アルディの店舗拡大の背景には、同社が米国でファンを増やしている事実があります。ニューヨークを拠点とする世界的金融企業のモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)社の最新のレポートによると、日常の食料品購入店舗を過去1年間に変更した顧客のうち約5分の1がアルディを選択したということです。1年前の同じ調査時との比較では、アルディはウォルマートやコストコ(Costco)をはじめとした代表的な企業を抑えて4ポイントも伸びたという結果が出ており、これはアルディのアメリカにおける存在感がますます増しているということの表れであるとのことです。 このアルディの快進撃を支えているのは、90%を超える独自ブランドをベースとした低価格戦略ばかりが注目されてきましたが、アメリカを拠点とする世界的なリテールコンサルティング企業のマーケットフォース(Market Force Information)社が、全米の約13,000人の消費者を対象に行った最新の調査によると、アルディの販売するオリジナル商品が8年連続で「Value Leader」、つまり最も「価値」のある商品のトップに選ばれたということで、安さだけではなく品質に対しても非常に高い評価を得ているということが分かります。 同社の最近のプレスリリースによると、今後すべての改装店舗および新店舗では、従来店舗から20%程度新たな商品を提供する予定で、更に生鮮食料品については約40%も取り扱いを増やしています。また、顧客の健康志向に応えるため、オーガニックやビーガンといったセレクションの充実と、人工着色料、トランス脂肪酸やグルタミン酸ナトリウムなどの排除を徹底するなど、顧客目線の商品展開を進めていくということです。 このような企業努力の結果として、2017年1年間で同社のオリジナルブランド商品のうち200品目以上が様々な賞を受賞しています。 また、約8,400億ドルと言われる現在のアメリカの食品小売市場において、ウォルマートとクローガーが全体の約3分の1という圧倒的なシェアを占めており、アルディはわずか2%程度と言われています。しかしながら、昨年5月のメールマガジン「競争激化の火付け役!アルディの戦略とは?」でもご紹介しました通り、アルディは今まで参入してきたマーケットにおいて、ウォルマート店舗から車で10分以内(5マイル圏内)に戦略的出店を行う「クロース・コンペティション」を実施し、同社の最大の強みである「価格競争」によって既存顧客を奪ってきています。 今年の7月のメールマガジン「米国人気スーパーマーケットランキング2018」でもご紹介した通り、アルディは4位にランクインしており、トップ5企業の中で唯一ランキングを上げている企業となっていることからも、同社の勢いが見て取れます。 更に、現代の小売企業に取って不可欠となっているオンラインへの対応でも、アルディの取り組みはライバル企業にとってさらなる脅威となるものと思われます。最近ではアメリカ最大の食品配送企業のインスタカート(Instacart)社との提携により、全米の主要マーケット75都市を含む、5,000以上のジップコードエリアへの食品配送を今年のサンクスギビング(11月22日)までに完了すると発表しています。また、オンライン注文品の店舗パーキングでの受け取りが可能なカーブサイドピックアップも一部店舗でパイロットテストを開始しています。 アルディは、上記のような様々な面から顧客満足度を向上させる取り組みを実施し、過去5年間で売り上げを2倍に延ばすことに成功しています。同社CEOのジェイソン・ハート(Jason Hart)氏は、今後5年間で更に売り上げを2倍にする予定と発表しており、同社の強い自信が伺えます。 シカゴを拠点とする世界的ビッグデータ分析企業のアイアールアイ(IRI)社のデータによると、アルディの改装後の店舗あるいは新しい店舗を始めて利用した顧客への調査によると、80%の消費者がアルディの店舗での買い物に大満足だったと回答しており、84%が次回からもアルディの店舗で買い物をするだろうと答えているということです。 価格、価値、顧客満足を高いレベルで提供し続けているアルディに、これからも注目をしていきたいと思います。 (2018.10.19配信)

1976年にアメリカに進出したアルディは、現在約53億ドルを投じた5年計画の大規模な店舗拡張とアップグレードのプロジェクトを進行中です。現在は36州で約1,900店舗を展開していますが、2022年末までに2,500店舗まで店舗網を伸ばす予定となっており、プロジェクト完了後にはウォルマートとクローガーに次いで3番目の店舗数になるものとみられています。

2017年に満を持してアメリカ進出を果たしたリドルは、現在東海岸を中心に9州で89店舗(2020年1月)を展開しています。昨年はニューヨークを拠点とする家族経営のスーパーマーケットチェーン「ベストマーケット」の27店舗の買収を発表し、2020年からニューヨークおよびニュージャージーに本格的に出店を予定しています。

また、アルディ、リドルの両社は英国でも大きな影響力を持っており、英国の食品小売市場において、かつて85%以上の市場シェアを独占していたBIG4と呼ばれる地元企業4社(テスコ、セインズベリー、アズダ、モリソンズ)の牙城を急激に侵食しています。

当社のメールマガジンでも、2019年10月の「ビッグ4に黄色信号!? 英国食品小売企業最新マーケットシェア」をはじめとして定期的に英国の食品小売り市場について取り上げて来ましたが、英国の市場調査会社のカンター・ワールドパネル(Kanter World Panel)社の最新のデータ(2019年12月29日)では、この4社のシェアは68.5%まで落ち込んでいます。

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ビッグ4に黄色信号!? 英国食品小売企業最新マーケットシェア

ビッグ4に黄色信号!? 英国食品小売企業最新マーケットシェア

昨年5月のメールマガジン「転換期到来の英国食品小売市場」にて、2018年4月時点の英国食品小売り市場シェアについてご紹介しましたが、その後の最新の食品小売り市場についてご報告いたします。 当時大きく報道されたセインズベリーズとアズダの合併は、結局CMA(英国公正取引委員会)の承認が下りずに実現しませんでしたが、ドイツ発のハード・ディスカウントチェーンのアルディとリドルによる英国小売り市場への攻勢は相変わらず続いているようですので、続報としてご紹介します。 以下、英国の市場調査会社の「カンター・ワールドパネル(Kantar Worldpanel)」社が発表している、2019年9月08日までの12週間の食品小売り市場シェアです。 ◎2019年9月08日時点の食品小売り市場シェア 順位小売企業名最新シェア2018年4月シェア前回対比2019年9月8日2018年4月18日11テスコ(Tesco)26.90%27.90%▼1.00%22セインズベリーズ(Sainsbury's)15.30%16.20%▼0.90%33アズダ(Asda)15.10%15.60%▼0.50%44モリソンズ(Morrisons)9.90%10.60%▼0.70%55アルディ(Aldi)8.10%7.00%△0.90%66コープ(Co-op)6.60%5.80%△0.80%78リドル(Lidl)6.00%5.40%△0.60%87ウェイトローズ(Waitrose)5.00%5.10%▼0.10% 地元英国のビッグ4と呼ばれる上位4企業が軒並みシェアを落としていることが分かります。 かつてはこの4社だけで、全体の8割以上のシェアを独占し、超寡占マーケットと呼ばれていた英国の食品小売り市場ですが、最新のデータではこの4社のシェアは67.20%となっており、昨年4月の70.30%から3.1ポイントも落としています。特に4位のモリソンズと5位のアルディの差が、この1年半で3.60%から1.80%と半分にまで縮まってきており、近い将来永年にわたって市場をリードしてきたビッグ4の牙城が崩れる可能性が高いということです。 実際に、アルディは現在英国内に約840店舗を展開してますが、2021年までに新たに100店舗をオープンすると発表しており、今年の7月以降すでに12店舗を新規出店し、年内にあと9店舗のオープンも確定するなど、出店攻勢が止まらない状況です。同社は2025年中に1,200店舗まで拡大するということです。 一方のモリソンズは、不採算店舗を閉店して雇用の削減を進めるというニュースが発表されており、アルディが4番目の位置に入るのは時間の問題のようです。 また、アルディのライバルであるリドルも順調にシェアを伸ばしています。 リドルは現在英国内で約740店舗を展開していますが、毎年約50店舗を継続的に新規出店しており、英国進出後初めて市場シェアで6%に到達しました。カンター・ワールドパネル社によると、リドルは今年に入り前年比で約61.8万人の新規顧客を獲得することに成功したということです。 シェアトップを走るテスコは、アルディとリドルに対抗するため、ちょうど1年前にハードディスカウント業態のジャックス(Jack’s)を10店舗出店しましたが、1年を待たずに1号店を閉鎖しました。 世界的市場調査会社のTCCグローバル(TCC Global)社によると、全世界の食品小売り企業の中でアルディとリドルが商品のバリュー(価値)の部門において、断トツのトップに立っているとのことです。テスコが同じ土俵で対抗し、顧客を獲得するのは難しく、自社の優れた部分で対抗することが必要だと述べています。同社の調査では、テスコはアメリカのクローガーと並んで、顧客へのリワードプログラムが秀逸という評価を得ており、店舗内の買い物体験の分野ではマークス&スペンサーとウェイトローズがアメリカのトレーダー・ジョーズと並んでトップとのことです。マークス&スペンサーとウェイトローズは顧客ケアの部門でもトレーダー・ジョーズとコストコと並んでトップの評価となっています。 ちなみにテスコはイスラエルのスタートアップ企業のトリゴ・ビジョン(Trigo Vision)社と提携して、人工知能や160台以上のセンサーカメラなどを使用したアマゾン・ゴーと同様のチェックアウト・フリー店舗のテストを開始すると発表しました。すでにテスコ本社内の店舗で従業員向けのテストを開始しているということで、買い物体験の部門への投資も開始しています。 今後も、英国トップのテスコをはじめとするビッグ4が、アルディやリドルにどのように対抗していくのか、引き続き注目し、定期的にご紹介していきたいと思います。 (2019.10.16配信)

アルディとリドルの2社が今後もアメリカのグロサリー小売市場に大きな影響を与えて行くのは間違いないと思われますが、近年このハード・ディスカウント業態において急速に注目されている、グロサリー・アウトレット(Grocery Outlet)という企業をご紹介します。

企業名グロサリー・アウトレット・バーゲンマーケット(Grocery Outlet Bargain Market)
本社所在地カリフォルニア州エミリービル
公式H/Phttps://groceryoutlet.com/
売上高22億8766万ドル(2018年12月決算)
店舗数337店舗(2019年12月決算時点)
主な出店エリア全米6州(カリフォルニア、オレゴン、アイダホ、ワシントン、ネバダ、ペンシルベニア)

同社の創業は1946年にアメリカ軍から食料品や日用品の余剰品を仕入れ、格安で販売を開始したのが始まりで、現在は全国のナショナルブランドのサプライヤーから、在庫余剰品、消費・使用期限の短い商品等を直接仕入れて、一般のスーパーマーケットよりも40%から70%も安い価格で提供するというビジネスモデルで展開しています。15期連続で対前年売り上げを大きくクリアし、成長してきた企業です。

取り扱い商品の90%以上が独自ブランド製品で安さを訴求しているアルディやリドルとは違い、ナショナルブランドの商品の仕入れを工夫することで更に安い価格を提供し続けている同社は、ハード・ディスカンターを超えたディープ・ディスカウンターとも呼ばれており、価格競争で優位に立つアルディ、リドル、ウォルマートといったメジャーな企業にとっても脅威となりつつあります。

グロサリー・アウトレットの平均的な店舗サイズは約4,500㎡で、4,000品目を超える食料品、日用品やビール、ワインなどを扱っています。また、各店舗では500品目を超えるNOSH商品(Natural, Organic, Specialty, Healthyの頭文字)を取り入れるなど、価格の安さだけでなく品質にも重点を置いています。

同社は1,500を超えるサプライヤーから日々、商品の仕入れを行っており、店舗に並ぶ商品も毎日変わります。消費者にとって、宝探しのようなショッピング体験ができる楽しみと、圧倒的な価格の安さによる2重の驚き(Wow)体験を提供しているため、グロサリー業界のTJX(オフプライス小売り企業)とも呼ばれています。

2019年にはオーストラリアのスタートアップ企業で、オンラインプラットフォームを介したサプライヤーと小売り企業のマッチングサービスを提供しているレンジミー(RangeMe)社と契約し、新たに15万社のサプライヤーから60万を超える商品の仕入れも可能としました。

2019年6月にはナスダック市場(NASDAQ)への上場を果たしています。上場時の株価は22ドルでしたが、2020年1月14日時点では33.65ドルとなり、右肩上がりの成長を遂げてます。

アメリカの持ち株会社コーウェン(Cowen)のアナリストは、グロサリー・アウトレットが70年間積み上げてきた信頼は非常に厚く、更に同社の独自のビジネスモデルは昨今流行りとなっているEコマースでは決して再現できないものであるとして、グロサリー・アウトレットの株はまさに「買い」であると、高く評価しています。また、グロサリー小売市場において最も重要なものは「価格」であると消費者の88%が回答しているという英国の調査会社ユーガブ(YouGov)のデータも引き合いに出してグロサリー・アウトレットの株を推薦しています。

さらに、グロサリー・アウトレットがメインに店舗展開をしているカリフォルニア州サンフランシスコにおける主なグロサリー企業の価格分析をご紹介します。アメリカの消費者向け情報誌の発行をしているコンシューマーズ・チェックブック(Consumers’  CHECKBOOK)社が2018年9月に発表したデータです。

全体平均を100とした場合の各社の平均価格を主な商品別に出しているものですが、ご覧の通りいずれの部門でもグロサリー・アウトレットが圧倒的な価格を実現していることが分かります。

企業名生鮮食品精肉全体
フードマックス(FoodMaxx)807985
グロサリー・アウトレット(Grocery Outlet)617670
ラッキー(Lucky)102104101
ルナルディーズ(Lunardi’s)98117111
レイリーズ(Raley’s)10995102
セーフウェイ(Safeway)10898102
スプラウツ(Sprouts Farmers Market)798390
※Consumers’ CHECKBOOK社データ

グロサリー・アウトレットは2019年1年間で32店を新規出店しましたが、将来的には全米で4,800店舗まで増やしていく予定ということです。

現在西海岸(カリフォルニア)をメインとしているため、アルディ、ウォルマート、フード4レスやスプラウツ・ファーマーズマーケットとの競合を見ることが可能です。東海岸のペンシルベニアではアルディ、リドル、フードライオン、ジャイアント・イーグル、ウェグマンズといった企業との比較も面白いのではないでしょうか。

今後アメリカのグロサリー市場における重要な注目企業としてグロサリー・アウトレットを加えたいと思います。

(2020.01.17配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業推進課)

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