プラスチックごみの削減は、いまや世界的に取り組むべき喫緊の課題として取り上げられています。
全世界で一年間に排出されるプラスチックごみは3億トンを超えていると言われており、環境省のデータでは日本は年間900万トン以上のプラスチックごみを排出しているということです。
アメリカ合衆国環境保護庁(EPA – United States Environment Protection Agency)のデータによると、2015年のアメリカのプラスチックごみの排出量は約3,450万トンということで、リサイクル率はわずか9.1%、埋め立てに利用されるのも26%ということで、早急なプラスチック製品そのものの削減が重要だとしています。
このような状況の中で、ワシントンD.C.を拠点とする国際的環境NGO組織であるグリーンピース(Greenpeace)が、今回初めての取り組みとして、アメリカを代表するスーパーマーケットチェーン20社を対象にして、プラスチックごみの削減への取り組み状況を調査し、「2019 Supermarket Plastics Scorecard」というタイトルでポイントランキングを発表しています。
上位10社のランキングは以下の通りです。
※グリーンピースデータより
今回グリーンピースは、特に使い捨てプラスチックごみに対する各企業の取り組みを、以下の4つの項目をそれぞれ100ポイントを満点として評価し、その平均値を出しているということです。
① プラスチックごみ削減に対する企業方針
② 実際に実行されている削減への取り組み
③ 削減のための独自の仕組みづくり
④ 削減への取り組み方針や仕組み等の情報公開(透明性)
昨年4月のメールマガジン「米国小売店の食品廃棄通知表」で最低ランクだったアルディが、今回34.6ポイントでトップになりました。
ただ驚くことに、今回のこのスコアは100ポイントを満点としているということで、グリーンピースによると、今回の評価を行う際に、最低限の‘合格’ラインを40ポイントに設定したということですが、トップのアルディでさえその合格ラインに到達しないという結果になりました。
言い換えると、プラスチックごみの削減は一朝一夕でできるようなものではなく、今後多くの企業努力を重ねていかない限り、この問題は到底改善されないものだと言えるのかもしれません。
今回合格ラインに到達していないとはいえ、トップになったアルディが、他社よりも優れていたのは、具体的な削減目標を数値と共に設定し、広く消費者をはじめ一般に公開しているという点ということで、この情報公開(透明性)の部分で53.2ポイントという比較的高い評価を得ています。
アルディは販売している商品の90%以上が自社商品(プライベートブランド)ということで知られていますが、同社は今年の4月に、2025年までに達成する具体的な削減プランを以下の通り発表しました。
・2025年までに全ての自社製品のパッケージをリユース、リサイクルあるいはコンポスト可能なものに変更する
・2025年までに自社製品を含むすべての商品のパッケージ自体を15%削減する
・2020年までに自社製品を含むすべての商品のパッケージをハウツー・リサイクル(How2Recycle)【※】認証のものに限定する
【※】How2Recyle : リサイクルが可能な製品にラベルを貼ることで、消費者に正しいリサイクル方法をわかりやすく案内するというプロジェクト推進団体
アルディは、2018年1年間でプラスチックをはじめ、紙類、段ボール、メタル等約25万トン以上のリサイクルを実行しているということで、環境先進国ドイツの企業らしさを発揮しているのではないでしょうか?
北米35州で約1,900店舗を展開するアルディは、現在約53億ドルを投じた5か年計画の真っ只中で2022年までに店舗数を2,500店舗まで増やし、ウォルマートとクローガーに次いで店舗数で3番目の地位を狙っていますが、その計画の重要な項目の一つとして今回のプラスチック削減を含めた環境への対応というのも含まれているということです。
ちなみに以下は11位から20位までのスコアです。
今回グリーンピースにより実施されたプラスチックごみ削減への取り組み評価は、前述の通り初めての試みとなりましたが、今後も定例で調査が行われていくようですので、引き続き注目をしていきたいと思います。
(2019.6.17配信)