バンコクの中心を流れるチャオプラヤ川西岸(トンブリ地区)で2011年から大規模な開発が進められていましたが、11月9日、ついにバンコクの新たなランドマークとして「アイコンサイアム(iconsiam)」がオープンしました。
8万㎡の広大な敷地に2棟のショッピングモール、会議場(シアター)、博物館、コンドミニアム(70階と40階の2棟)などが建設され、延べ床面積は75万㎡に及びます。このプロジェクトはサイアムパラゴン、サイアムディスカバリーといったショッピングモールを運営するサイアム・ピワット社(51%)、マグノリア・クオリティ・ディベロップメント(24.5%)、大手財閥CPグループ(24.5%)の3社が共同で進めたもので、その投資額は民間投資額としては過去最高の500億バーツ(約1700億円)と言われています。
開業する9日から3日間、大規模なオープニングイベントを開催し、その開催費用だけで10億バーツ(約34億円)と言われ、タイの大手イベント会社7社が様々な催しを行います。開業当初の来店者目標は1日15万人以上としており、自信に満ちた船出と言えます。
「アイコンサイアム、アイコンラックス」
このプロジェクトの概要は以下のようなもので、その規模に圧倒されます。
・9階建てのショッピングモール「アイコンサイアム」の延べ床面積は52万5000㎡で、アンカーテナントとして
高島屋(売り場面積3.6万㎡)が7フロアに渡り入ります。
世界的な高級ブランドの旗艦店を一堂に集めた別館の「アイコンラックス」は延べ床面積2万5000㎡で、両棟
の入居店舗の合計は約500店舗と言われ、そのうち100店舗はタイ初上陸とされます。
この2棟のショッピングモールの建物の意匠は毎年チャオプラヤ川で催される灯篭流しの灯篭(クラトン)を折
りたたんだ様子を模したもので、タイの文化をガラスによる垂直なプリーツで表しています。
・川沿いのテラス、屋内ガーデン、ルーフトップなど様々なシチュエーションを楽しめる飲食施設にはミシュラン
3つ星レストランやタイ国内外の有名店100店舗以上が集まります。
・川沿いの400mの遊歩道に並ぶ飲食店はアジアティーク・リバーフロントよりも高級志向を目指しており、この
遊歩道に沿って光と水と音のショーが繰り広げられます。
・インドアに造営される8000㎡の水上マーケットでは、タイを代表する特産品や手工芸品、民族衣装などを扱う
店が並びます。
・タイの歴史・文化を紹介したり世界中の芸術作品の巡回展示も行う博物館「アイコンサイアム・ヘリテージ・
ギャラリー」や会議場、3000席のシアター、映画館も併設されます。
「サイアム高島屋」
高島屋は海外での多店舗化、新規事業開発を成長戦略の一つとしており、既存のシンガポール、中国、ベトナムに続く4カ国目の海外店舗となります。
高島屋によると、高島屋シンガポール店1店舗の年間売上利益は国内全店舗の利益の約1/3に匹敵しており、そのノウハウを基に地域に根差した店づくりを目指すとしています。「タイの最高と高島屋のフュージョン」をコンセプトに日本の良いモノを各階に配し、現地の消費者にタイの新しいライフスタイルを提案するとのことです。
高島屋の成功ノウハウのひとつに「物産展」の開催があると言われています。日本国各地の物産を紹介することで集客を増やしており、今回のサイアム高島屋の1階には「北海道どさんこプラザ」という北海道のアンテナショップが入居しています。
「アクセス」
チャオプラヤ川の東岸は王宮や仏教寺院、高級ホテル、ショッピングゾーンなどが点在し、日々多くの人々が行き来していますが、アイコンサイアムはチャオプラヤ川の西岸に位置し、アクセス面の悪さが指摘されていました。 実際に最寄駅とされるBTSシーロム線のクルントンブリ駅からも徒歩で20分ほどかかると言われ、集客面でネックと考えられていました。
そのような中、クルントンブリ駅からの1.72km(3駅)の区間にバンコク初のモノレールを建設し、2018年中に完成させるという計画が進められています。これによりアイコンサイアム直結の駅が設けられ、アクセスが飛躍的に良くなることとなります。
このモノレールの始発駅と連絡するクルントンブリ駅(BTSシーロム線)は、チャオプラヤ川の東岸から伸びる路線の駅です。多くの観光客や現地の人々を東岸からアイコンサイアムに呼び込み、これまでの人の流れを変える大きなインパクトになると言われています。
また、アイコンサイアムの対岸(東岸)にはマンダリン・オリエンタル、シェラトン、シャングリラといった高級ホテルが軒を並べ、各ホテルからはシャトルボートが運行され、ホテルから直接訪れることもできます。アイコンサイアムで買い物を楽しんだ後、ディナークルーズで食事をしながらホテルに戻ることも可能とのことです。
慢性的な渋滞でストレスの貯まる車の移動から、モノレール、ボートといった新たな交通手段を提示し、その接続ハブとして人の流れを大きく変えようとしています。
タイ政府はアイコンサイアムに隣接するチャオプラヤ川沿いの財務省所有の6400㎡の土地に「ザ・バンコク・オブザベーションタワー」の建設を発表しました。このタワー建設は国家事業と位置付けられ2019年の完成を目指すとのことです。
高さ459mで、事業費は約46億バーツ(約160億円)を見込み、民間の寄付や財団法人、金融機関からの借入で補い、完成後は750バーツ(約2500円)の入場料で運営を行っていきます。
タワーのデザインはロウソクを模した形で、国の繁栄を照らし出すシンボルとしての意味合いがあると言われています。タワー内はタイの歴史、文化遺産の紹介や教育目的に利用され、利益は地域社会や慈善団体に還元されるとのことです。
巨大プロジェクトの完成に伴い、人々の流れがどの様に変わるのか、今後の展開がとても注目されます。
(2018.11.12配信)