ドイツ生まれのハードディスカウンターであるアルディ(ALDI)が、アメリカ・アイオワ州に初進出をしたのが1976年。
それから40年余りの時を経て、今では全米で1,800店舗強を展開し、最新の全米小売業協会による「全米小売業トップ100ランキング」ではメイシーズ(Macy’s)を抜いて17位となるなど、アメリカを代表する巨大スーパーマーケットチェーンとなりました。
また、昨年から53億ドルを投じて既存店の大改装と新店舗の拡大を進めており、2022年までに更に700店舗を追加し、トータル2,500店舗まで拡大する計画とのことです。
計画完了後には店舗数でウォルマート(Walmart)とクローガー(Kroger)に次いで全米第3位になるものと予想されております。
アルディの店舗拡大の背景には、同社が米国でファンを増やしている事実があります。ニューヨークを拠点とする世界的金融企業のモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)社の最新のレポートによると、日常の食料品購入店舗を過去1年間に変更した顧客のうち約5分の1がアルディを選択したということです。1年前の同じ調査時との比較では、アルディはウォルマートやコストコ(Costco)をはじめとした代表的な企業を抑えて4ポイントも伸びたという結果が出ており、これはアルディのアメリカにおける存在感がますます増しているということの表れであるとのことです。
このアルディの快進撃を支えているのは、90%を超える独自ブランドをベースとした低価格戦略ばかりが注目されてきましたが、アメリカを拠点とする世界的なリテールコンサルティング企業のマーケットフォース(Market Force Information)社が、全米の約13,000人の消費者を対象に行った最新の調査によると、アルディの販売するオリジナル商品が8年連続で「Value Leader」、つまり最も「価値」のある商品のトップに選ばれたということで、安さだけではなく品質に対しても非常に高い評価を得ているということが分かります。
同社の最近のプレスリリースによると、今後すべての改装店舗および新店舗では、従来店舗から20%程度新たな商品を提供する予定で、更に生鮮食料品については約40%も取り扱いを増やしています。また、顧客の健康志向に応えるため、オーガニックやビーガンといったセレクションの充実と、人工着色料、トランス脂肪酸やグルタミン酸ナトリウムなどの排除を徹底するなど、顧客目線の商品展開を進めていくということです。
このような企業努力の結果として、2017年1年間で同社のオリジナルブランド商品のうち200品目以上が様々な賞を受賞しています。
また、約8,400億ドルと言われる現在のアメリカの食品小売市場において、ウォルマートとクローガーが全体の約3分の1という圧倒的なシェアを占めており、アルディはわずか2%程度と言われています。しかしながら、昨年5月のメールマガジン「競争激化の火付け役!アルディの戦略とは?」でもご紹介しました通り、アルディは今まで参入してきたマーケットにおいて、ウォルマート店舗から車で10分以内(5マイル圏内)に戦略的出店を行う「クロース・コンペティション」を実施し、同社の最大の強みである「価格競争」によって既存顧客を奪ってきています。
今年の7月のメールマガジン「米国人気スーパーマーケットランキング2018」でもご紹介した通り、アルディは4位にランクインしており、トップ5企業の中で唯一ランキングを上げている企業となっていることからも、同社の勢いが見て取れます。
更に、現代の小売企業に取って不可欠となっているオンラインへの対応でも、アルディの取り組みはライバル企業にとってさらなる脅威となるものと思われます。最近ではアメリカ最大の食品配送企業のインスタカート(Instacart)社との提携により、全米の主要マーケット75都市を含む、5,000以上のジップコードエリアへの食品配送を今年のサンクスギビング(11月22日)までに完了すると発表しています。また、オンライン注文品の店舗パーキングでの受け取りが可能なカーブサイドピックアップも一部店舗でパイロットテストを開始しています。
アルディは、上記のような様々な面から顧客満足度を向上させる取り組みを実施し、過去5年間で売り上げを2倍に延ばすことに成功しています。同社CEOのジェイソン・ハート(Jason Hart)氏は、今後5年間で更に売り上げを2倍にする予定と発表しており、同社の強い自信が伺えます。
シカゴを拠点とする世界的ビッグデータ分析企業のアイアールアイ(IRI)社のデータによると、アルディの改装後の店舗あるいは新しい店舗を始めて利用した顧客への調査によると、80%の消費者がアルディの店舗での買い物に大満足だったと回答しており、84%が次回からもアルディの店舗で買い物をするだろうと答えているということです。
価格、価値、顧客満足を高いレベルで提供し続けているアルディに、これからも注目をしていきたいと思います。
(2018.10.19配信)