アメリカの小売店舗の顧客満足度や店舗選択には「レジの待ち時間」や「レジあるいは店舗スタッフの対応」が大きく影響しており、アマゾン・ゴー(Amazon Go)をはじめとする、レジ無し店舗技術の開発も進んでいます。今回のメールマガジンでは、アメリカ小売店舗のレジ無店舗等の無人化の最新技術を導入した、注目すべき取り組みについてご紹介します。
電子透かし技術(バーコード等)のリーディング企業であるデジマーク(Digimarc)社が、大手調査会社のフォレスター・コンサルティング(Forrester Consulting)に委託をし、買い物における顧客満足度を大きく左右するものは何かについて、1,000名の消費者を対象に調査をしたところ、「店舗の場所と価格」に次いで、「レジ待ち時間」と「レジあるいは店舗スタッフの対応」が非常に大きな要素であるということがわかりました。
具体的には、84%が支払い時における経験が「重要」あるいは「極めて重要」と回答しています。また、39%はレジ待ちの長蛇の列により買い物を断念したことがあり、56%は次回以降の買い物をする店舗を変更したと回答しています。「レジ」の効率化は、 買い物をする店舗の大きな決め手になっていることがわかります。
オンライン全盛の現代において、購入した商品を顧客の手元に届ける最後の部分を「ラストマイル」あるいは「ラストワンマイル」と呼んでいますが、レジでの体験は店舗におけるラストマイルと呼べるかもしれません。
顧客の満足度をアップさせ、次の購買行動につなげるため、このラストマイルの充実に対して各企業が様々な取り組みをしています。アマゾンが各地にフルフィルメントセンターを設置し、同日配達、翌日配達といったサービスを確立してから、更にこの分野における競争は激しくなっています。
レジ無し店舗として大きな注目を浴びているアマゾン・ゴーは、今年の1月に一般公開されたレジ無しコンビニですが、今月(8月)にはシアトルに2号店をオープンさせています。今後シカゴ、サンフランシスコおよびロサンゼルスにも店舗をオープンする予定とのことです。
このアマゾン・ゴーは人工知能やコンピュータービジョン等を駆使することで、顧客の入店・商品選択・退店・決済までを人の手を介さず、極めて正確に行うことが可能なシステムで、「Just Walk Out」と呼ばれています。
商品を自分のスマートフォンまたは店内設置のスキャナーでスキャンして自分のバッグに入れて帰るシステムは、サムズクラブ(Sam’s Club)で導入れてており、アプリ内で決済をしてレジを通らず退店することができます。一方のクローガー(Kroger)やマイヤー(Meijer)等の場合は、同様のシステムを導入していますが、最終的にセルフレジにて決済をする必要があります。
いずれも通常のフルサービスのレジよりもスピードアップは可能ですが、商品を一つ一つスキャンする手間があるため、やはりアマゾン・ゴーのシステムは一歩も二歩も先に進んでいるものと考えられます。
このアマゾン・ゴーの「Just Walk Out」システムと同様に、独自の技術のビジネスモデルを実現しているスタートアップ企業が出てきており、Amazon Go-like(アマゾン・ゴーのような)企業と呼ばれ、注目されていますので、2社をご紹介します。
※Just walk-out システム開発スタートアップ企業
1 | Zippin (ジッピン) | サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業で、人工知能、カメラ、 センサー等を使った完全チェックアウトフリー技術を開発し、現在サンフランシスコ市内の小規模店舗にてテストを重ねています。 9月中に一般公開の予定です。 |
2 | Inokyo (イノーキョー) | サンフランシスコ郊外のマウンテン・ビュー(Mountain View)を拠点とするスタートアップ企業で、 人工知能、カメラ、センサー等を使ったチェックアウトフリーのシステムですが、 店舗を出る際にゲートにてスマートフォンによるスキャンをする必要があります。 商品を持ったまま何もせずに店を出ることに慣れていない現代の買い物客の心理を考えて、 あえて退店時にもスキャンをするように設定しています。 マウンテンビューの小規模店舗でKOMBUCHA(紅茶キノコ飲料)やスナックなどの購入が可能となっています。 |
また、このようなレジ無し店舗技術の他にも、クローガーがアリゾナ州スコッツデールの傘下企業のフライズ(Fry’s)にて無人自動車による食品配送のテストを開始しており、新たなラストマイルへの取り組みを進めています。
ウォルマートは店舗を配送対応用の倉庫(フルフィルメントセンター)に改装し、倉庫内で配送する商品をピックアップする人工知能搭載のロボットを導入するテストを開始しています。同社は店内にて商品在庫や配置、値札の間違いなどをチェックする専用のロボットもニューハンプシャー州のセーラム(Salem)店にて行っています。店内の在庫管理、値札チェック等の仕事をロボットに任せることで、スタッフは顧客へのサービスに集中することができるようになり、店内における買い物体験のレベル向上につなげていこうということだと言われています。
また、ノースカロライナ州を拠点に東海岸地区10州にて約1,200店舗を展開しているアホールド・デレーズ(Ahold Delhaize)傘下のフード・ライオン(Food Lion)も今年の4月から、テネシー州のラ・フォレット(La Follette)の店舗にて、マーティ(Marty)と呼ばれるロボットを導入しており、在庫管理や店内清掃を行っています。
このように多くの企業が新しい技術を使ったサービスを始めており、今後も注目していきたいと思います。
(2018.08.31配信)