2016年9月のメールマガジン「米国で急成長!『ミール・キット』の食材宅配サービス」にて、注目を浴び始めていたミールキットについて特集をしました。それから約2年近く経過した中で、アメリカにおけるミールキット市場には大きな変化がありましたので、ご紹介いたします。
2016年9月時点でのミールキットの市場規模は4億ドルでしたが、食品市場調査会社であるパッケージド・ファクツ(Packaged Facts)社によると、現在は5倍以上の約22億ドルにまで成長しているとのことです。また、世界的な金融会社のゴールドマンサックス(Goldman Sachs)社によると、2020年までには50億ドル規模にまで成長するだろうとのことです。
ミールキットは調理済みの食材とレシピがセットになったものですが、以下のようなメリットがあることから右肩上がりの成長を続けています。
・買い物に行く手間が省ける(オンラインの場合)
・献立を考える必要が無い
・調理の手間がかからず、レシピに従いレストラン並みの料理ができる
・今まで作ったことのない新しいメニューを体験できる
・食材の無駄が出ない
そもそもミールキットというビジネスは、2007年にスウェーデンのMiddagsfrid社が新しいビジネスモデルとして始めたサービスで、アメリカでは2010年にスタートアップ企業のゴブル(Gobble)社がサービスを開始しています。2012年からドイツ生まれのハローフレッシュ(Hello Fresh)社をはじめとして、プレーテッド(Plated)社、ブルーエプロン(Blue Apron)社、2013年にはホームシェフ(Home Chef)社が参入し、それまでの需要の小さいニッチな市場から一大ミールソリューションビジネスとして注目を浴びるようになりました。
世界最大の調査会社であるニールセン(Nielsen)社が先月発表したデータによると、過去半年間でアメリカ国民の9%がオンラインあるいは店舗においてミールキットを購入したということです。これは総世帯数にして約1,050万世帯が利用したということになります。その中で、オンラインによる購入は約6%を占めています。
また、今後半年の間にミールキットを購入したいと考えているアメリカ国民は約25%で、総世帯数にして約3,010万世帯になるということで、今後もまだまだ伸びる市場と考えられています。
データ分析企業であるアーネストリサーチ(Earnest Research)社によると、2017年1年間でアメリカのミールキットの売り上げは前年比で40.7%伸びたということです。
以下の表は2018年2月時点の市場シェアをまとめたものです。(2017年9月時のシェアとの対比)
※2018年2月時点 ミールキット市場シェア
順位 | 企業名 | 2018年2月 | 2017年9月 | 前回対比 |
---|---|---|---|---|
1 | ハローフレッシュ(HelloFresh) | 36.00% | 31.30% | 4.70% |
2 | ブルーエプロン(Blue Apron) | 35.00% | 40.30% | ▼5.30% |
3 | ホームシェフ(Home Chef) | 13.00% | 10.50% | 2.50% |
4 | サンバスケット(Sun Basket) | 10.00% | 7.90% | 2.10% |
5 | プレーテッド(Plated) | 7.00% | 5.70% | 1.30% |
上記の表からは、オンラインによる定期購入(サブスクリプション)形式のビジネスを展開するブルーエプロン社が、大きくシェアを落していることが分かります。これまではミールキット購入の大半がオンラインによるサブスクリプションでしたが、前述のニールセン社によると、この1年でスーパー等の店舗内での購入が26.5%伸びているとのことです。2017年は1億5,460万ドルの売り上げ規模となっています。2017年に店舗で販売された食品類(生鮮、乳製品、冷凍食品等)の売り上げは0.1%落ちて、3,740億ドルだったことに比べ、店舗内でのミールキットの存在感が増していることがわかります。
店舗内でのミールキットの需要が伸びている背景には、過包装されたキットから出る廃棄物の問題や、数日から数週間先の受け取りスケジュールを決めなければならないなど、実際に受け取ることへの煩わしさがあるということです。こうした消費者の変化がブルーエプロン社の業績に影響したようです。また同社は昨年6月にミールキット企業として初めてIPO(株式公開)をしましたが、大きく株価を下げてしまいました。その原因として同社のIPOを行ったタイミングと、アマゾンによるホールフーズ買収およびアマゾン独自ブランドのミールキット開発に関するニュースの発信されたタイミングが重なったことも影響したとみられています。
今年の3月には世界最大の小売企業であるウォルマート(Walmart)が独自ブランドのミールキットを250店舗で販売開始し、年内に2,000店舗まで拡大すると発表しました。ウォルマートの動きを受けて、多くの企業が独自のミールキットへの取り組みや既存のミールキット企業との提携を進めるという動きが活発になっていますので、ご紹介します。
以下は主な企業のミールキットに関する最新の取り組み状況をまとめたものです。
アルバートソンズ(Albertsons) | 昨年独自の調査により、顧客の約8割がミールキットの購入をしたいという結果を受け、業界5位のプレーテッドを買収。今年4月に、傘下企業での販売を年内に2,000店舗まで拡大すると発表した。 |
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クローガー(Kroger) | 昨年9月に独自ミールキット’プレップ・ペアド’の販売を開始し、今年4月には、業界3位のホームシェフの買収を発表。 |
コストコ(Costco) | 今年の5月に、業界2位のブルーエプロンのミールキットを一部の店舗で、従来よりも30%値段を下げて販売すると発表。 コストコは、シェフド(Chef’d)のミールキットも既に販売を開始しており、本格的なミールキット市場への参入を始めた。 |
ショップライト(ShopRite) | 3月に独自ブランドの多国籍(タイ、韓国、モロッコ等)のグルメミールキット’Chef’s Menu’を発表した。 すべての食材はUSDA(アメリカ農務省)の認可を取得した安全で高品質なものを使用している。 |
アホールド・デレーズ(Ahold Delhaize) | 6月に入り、業界1位のハローフレッシュとの提携を発表。傘下企業のジャイアントフード(Giant Food)とストップ&ショップ(Stop & Shop)581店舗での販売を開始すると発表した。 |
他にも自社開発のオリジナルミールキットを販売している主な企業として、アメリカ中西部で存在感を増しているハイヴィー(Hy-Vee)やマイヤー(Meijer)、東海岸でウェグマンズ(Wegmans)と人気を二分しているパブリクス(Publix)、テキサス州でシェアを独占するエイチイーバット(H.E.B.)および同社アップスケール店舗のセントラルマーケット(Central Market)等が挙げられます。
錚々たる企業がミールキットの取り組みを開始し、更なる成長が予想されているミールキット市場に、今後も注目していきたいと思います。
(2018.06.11配信)