近年、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品廃棄」が全世界で問題となっていますが、今回のメールマガジンでは、米国における食品廃棄の実態と、主要スーパーマーケット10社の食品廃棄への対応の「通知表」をご紹介します。
日本における食品廃棄は、2016年6月の農林水産省の資料によると、年間約632万トンに上るとのことです。
日本では形の悪い野菜や果物は市場に出荷されることなく廃棄されたり、いわゆる「3分の1ルール」によって賞味期限が来ていないにも関わらず食品が廃棄されるなどしており、真剣に取り組んでいかなければならない問題となっています。
※「3分の1ルール」とは、賞味期限の3分の1までを小売店への納品期限、次の3分の1までを消費者への販売期限とする業界の商慣習です。
米国における食品廃棄は、年間約6,250万トンにものぼり、日本の約10倍にあたります。米国の環境団体の一つ、「天然資源保護評議会(NRDC-Natural Resources Defense Council)」によると、全米で生産される食品の約40%が毎年廃棄されているということです。金額に換算すると毎年約2,180億ドルが無駄になっているという状況です。
ドイツの調査会社スタティスタ(Statista)社による報告では、米国における食品廃棄で最も多いのは個人の家庭から出るもので約2,700万トン、2番目に多いのは生産者(農場等)の約1,000万トン、そして3番目に多いのが食品小売の約800万トンということです。
※データはStatista社より
こうした状況の中、米国で展開しているスーパーマーケット主要10社(10社合計で約13,000店舗)の、食品廃棄への対応に関する「通知表」が発表されましたので、ご紹介します。
この「通知表」は米国の「生物多様性センター(The Center for Biological Diversity)」と、食品廃棄を減らすためのキャンペーン「アグリ―・フルーツ・アンド・ベジ・キャンペーン(Ugly Fruit and Veg Campaign)」を展開している組織の「エンド・フード・ウェイスト(EndFoodWaste)」により発表されました。
※データはThe Center for Biological Diversityより
評価は3つのカテゴリーからなり、それぞれの概要は以下の通りです。
◎説明責任・情報開示(19点満点)
各社の食品廃棄の量・内容・処理方法等について、および食品廃棄ゼロに向けて具体的達成時期と方策について、ホームページ等で詳しく公開しているかどうか。
◎予防施策(20点満点)
形の悪い野菜や果物でもまとめて仕入れて、消費者に提供する仕組みを構築し、食品廃棄を減らす取り組みをしているかどうか。
◎食品リサイクル(11点満点)
余剰食品の寄付や、家畜給餌への取り組みをしているか、また廃棄食品のコンポスト化やバイオ技術による消化技術の導入などをしているか。
評価はAからFの5段階で、ポイント構成は次の通りです。
A : 40ポイント以上
B : 30〜39ポイント
C : 20〜29ポイント
D : 10〜19ポイント
F : 0〜 9ポイント
※アルファベット順ではDの次はEになりますが、The Center for Biological Diversityの資料に則っております。
「通知表」からはアホールド・デレーズ・グループが情報公開の分野で他社を大きく引き離しているものの、具体的な施策の部分で立ち遅れていることが分かります。クローガーは昨年、2025年までに食品廃棄をゼロにすると発表し、具体的な指針をホームページ等で明示しており、情報公開の部分で高い評価を得ました。
ウォルマートは、2017年には消費期限の迫っている食品を2.5億食販売したり、形の悪い食品の販売促進を全店舗で行ったりしています。また、消費者が賞味期限や消費期限に関して誤解をして不要な廃棄をしないよう、分かりやすい表示を徹底するなど、具体的な施策の部分で高い評価を得ており、今回の10社の中で最高の得点となりました。世界最大の小売企業であるウォルマートは、具体的な取り組みでも他社をリードしているようです。
また、食品廃棄は、その焼却や埋め立てなどの最終処分の際の水資源の消費や、二酸化炭素の発生などによる環境や生態系へのインパクトも問題となっています。2016年には米国の「農務省(USDA)」と「環境保護庁(Environmental Protection Agency)」が、2030年までに食品の廃棄を現在の半分に削減するプログラムを発表していますが、ウォルマート(Walmart)やウェグマンズ(Wegmans)はこのプログラムにいち早く賛同し、参加を表明しています。
また、今回のデータでは、Aランクを獲得した企業としてイギリスのテスコが紹介されています。テスコは、同社ホームページにおいて、具体的な食品廃棄削減のロードマップを公開しています。サプライヤーとも協力を行い、サプライチェーンのあらゆる局面での食品廃棄削減に取り組んでいます。テスコ関連店舗から出た食品廃棄物の埋め立て処分は2009年からゼロとなっており、2016年にはまだ安全に食べられる余剰食品の100%をチャリティー団体に寄付すると発表し、2018年3月までに実行するとしています。
今後避けて通ることのできない食品廃棄の問題に関して、ウォルマートをはじめとする米国企業と、A評価を受けたテスコの取り組みの結果についても、引き続き注目をしていきたいと思います。
(2018.04.27配信)