変化を続ける英国食品小売企業の勢力図

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今回は2019年10月に投稿した「ビッグ4に黄色信号!?英国食品小売企業最新マーケットシェア」以来、約3年ぶりに英国の食品小売の最新状況についてご紹介いたします。

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ビッグ4に黄色信号!? 英国食品小売企業最新マーケットシェア

ビッグ4に黄色信号!? 英国食品小売企業最新マーケットシェア

昨年5月のメールマガジン「転換期到来の英国食品小売市場」にて、2018年4月時点の英国食品小売り市場シェアについてご紹介しましたが、その後の最新の食品小売り市場についてご報告いたします。 当時大きく報道されたセインズベリーズとアズダの合併は、結局CMA(英国公正取引委員会)の承認が下りずに実現しませんでしたが、ドイツ発のハード・ディスカウントチェーンのアルディとリドルによる英国小売り市場への攻勢は相変わらず続いているようですので、続報としてご紹介します。 以下、英国の市場調査会社の「カンター・ワールドパネル(Kantar Worldpanel)」社が発表している、2019年9月08日までの12週間の食品小売り市場シェアです。 ◎2019年9月08日時点の食品小売り市場シェア 順位小売企業名最新シェア2018年4月シェア前回対比2019年9月8日2018年4月18日11テスコ(Tesco)26.90%27.90%▼1.00%22セインズベリーズ(Sainsbury's)15.30%16.20%▼0.90%33アズダ(Asda)15.10%15.60%▼0.50%44モリソンズ(Morrisons)9.90%10.60%▼0.70%55アルディ(Aldi)8.10%7.00%△0.90%66コープ(Co-op)6.60%5.80%△0.80%78リドル(Lidl)6.00%5.40%△0.60%87ウェイトローズ(Waitrose)5.00%5.10%▼0.10% 地元英国のビッグ4と呼ばれる上位4企業が軒並みシェアを落としていることが分かります。 かつてはこの4社だけで、全体の8割以上のシェアを独占し、超寡占マーケットと呼ばれていた英国の食品小売り市場ですが、最新のデータではこの4社のシェアは67.20%となっており、昨年4月の70.30%から3.1ポイントも落としています。特に4位のモリソンズと5位のアルディの差が、この1年半で3.60%から1.80%と半分にまで縮まってきており、近い将来永年にわたって市場をリードしてきたビッグ4の牙城が崩れる可能性が高いということです。 実際に、アルディは現在英国内に約840店舗を展開してますが、2021年までに新たに100店舗をオープンすると発表しており、今年の7月以降すでに12店舗を新規出店し、年内にあと9店舗のオープンも確定するなど、出店攻勢が止まらない状況です。同社は2025年中に1,200店舗まで拡大するということです。 一方のモリソンズは、不採算店舗を閉店して雇用の削減を進めるというニュースが発表されており、アルディが4番目の位置に入るのは時間の問題のようです。 また、アルディのライバルであるリドルも順調にシェアを伸ばしています。 リドルは現在英国内で約740店舗を展開していますが、毎年約50店舗を継続的に新規出店しており、英国進出後初めて市場シェアで6%に到達しました。カンター・ワールドパネル社によると、リドルは今年に入り前年比で約61.8万人の新規顧客を獲得することに成功したということです。 シェアトップを走るテスコは、アルディとリドルに対抗するため、ちょうど1年前にハードディスカウント業態のジャックス(Jack’s)を10店舗出店しましたが、1年を待たずに1号店を閉鎖しました。 世界的市場調査会社のTCCグローバル(TCC Global)社によると、全世界の食品小売り企業の中でアルディとリドルが商品のバリュー(価値)の部門において、断トツのトップに立っているとのことです。テスコが同じ土俵で対抗し、顧客を獲得するのは難しく、自社の優れた部分で対抗することが必要だと述べています。同社の調査では、テスコはアメリカのクローガーと並んで、顧客へのリワードプログラムが秀逸という評価を得ており、店舗内の買い物体験の分野ではマークス&スペンサーとウェイトローズがアメリカのトレーダー・ジョーズと並んでトップとのことです。マークス&スペンサーとウェイトローズは顧客ケアの部門でもトレーダー・ジョーズとコストコと並んでトップの評価となっています。 ちなみにテスコはイスラエルのスタートアップ企業のトリゴ・ビジョン(Trigo Vision)社と提携して、人工知能や160台以上のセンサーカメラなどを使用したアマゾン・ゴーと同様のチェックアウト・フリー店舗のテストを開始すると発表しました。すでにテスコ本社内の店舗で従業員向けのテストを開始しているということで、買い物体験の部門への投資も開始しています。 今後も、英国トップのテスコをはじめとするビッグ4が、アルディやリドルにどのように対抗していくのか、引き続き注目し、定期的にご紹介していきたいと思います。 (2019.10.16配信)

3年前の記事では、ドイツ生まれのハード・ディスカウントチェーン2社「アルディ」と「リドル」の攻勢により、英国食品小売市場にそれまで君臨していた「ビッグ4」と呼ばれる上位4社が軒並みシェアを落としているという内容でした。かつては、ビッグ4の市場シェアは8割を超え、英国食品小売市場は超寡占状態でしたが、3年前の時点のシェアは67.2%まで下がり、その後もアルディとリドルの躍進は続いており、ビッグ4の一角に迫る勢いとなっています。

英国の市場調査会社大手カンター・ワールドパネル(Kanterworldpanel)社が発表した2022年7月10日までの12週間の売上による市場シェアは以下の通りです。

上位4社によるシェアは65.1%まで落ちてきており、更に4位のモリソンズと5位のアルディの差が、3年前は1.8%だったものが今回僅か0.3%にまで縮まりました。

恐らく数か月以内に長年続いてきた英国ビッグ4による市場寡占の構図に終わりが来るものと思われます。

ちなみに10年前のビッグ4による市場シェアは76.5%でした。

当時7位と8位だったアルディとリドルが10年後にコープ、ウェイトローズを抜いて4位と5位に躍進しました。

アルディはイギリス国内にて950店舗以上を展開しておりますが、今年に入りロンドン市内南東部のグリニッジにて同社初のレジ無し店舗ALDI SHOP & GOをオープンしました。 

アルディのモバイルアプリにクレジットカード情報を同期し、店舗入り口ゲートでスキャンすることで入店することができます。そのあとは欲しいものを手に取りそのまま退店することで自動的に精算が終了するものですが、アマゾン、テスコ、セインズベリー等が展開するレジ無し店舗に対抗するもので、デジタルを駆使した最先端のショッピング体験の分野でも力を入れています。

2022年7月の英国の食品小売価格は9.9%のインフレ率を記録しており、2008年に前述のカンター・ワールドパネル社が統計を取り始めてから2番目の高さということです。こうした背景もあり、低価格で高品質な食料品を取り扱うアルディとリドルへの注目の高まりを見せる中で、現在英国人の3人に2人はこの2社のどちらかで買い物をしているということです。

シェアトップのテスコがアルディとリドルに対抗するため、2018年から導入したハード・ディスカウント業態店舗のジャックス(Jack’s)は、13店舗まで出店したものの今年に入って7店舗を閉鎖、6店舗を通常のテスコ店舗に変えたということです。自社ブランド商品を90%以上持ち、長年のディスカウント業態での経験を持つアルディとリドルと同じ土俵で戦うのは無理があったようです。

今後も英国をはじめ欧州の流通事情について、定期的に注目していきたいと思います。

(2022.8.5配信/記事作成:イオンコンパス(株)営業戦略部)

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