米国ミールキット最新事情

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2016年9月のメールマガジン「米国で急成長!『ミール・キット』の食材宅配サービス」にて、注目を浴び始めていたミールキットについて特集をしました。それから約2年近く経過した中で、アメリカにおけるミールキット市場には大きな変化がありましたので、ご紹介いたします。

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米国で急成長!「ミール・キット」の食材宅配サービス

米国で急成長!「ミール・キット」の食材宅配サービス

調理前の食材がセットになっている「ミール・キット(Meal Kit)」を自宅まで配送してくれる食材配達サービスが、米国で急速に業績を伸ばしています。2012年頃から広まり、現在は4億ドルの市場があると言われており、5年後には10倍もの規模に成長するとみられています。米国の有力な消費者団体専門誌であるコンシューマー・レポート誌(10月号)でもブルーエプロン等のミール・キットについての比較特集が組まれています。 ミール・キットを取り扱う企業は全米で100社以上にも上り、それぞれ料金やサービスを競っています。メニューは利用者が選べる会社がほとんどですが、週に数回決められたメニューを配送する企業もあります。 ミール・キットを利用している中心はミレニアル世代です。結婚して家庭を持ち、料理はしたいが買い物や料理の時間が十分にとれない、この世代のニーズを満たしているとみられます。ミレニアル世代は自然派志向が強く、フレッシュさにこだわりがあるため、出来合いのものではなく、食事の準備にはもっと時間をかけたいと感じている人も多くいます。一方で効率よく調理を行いたいという思いも持っているのも事実です。そうした需要にマッチしたのがミール・キットです。 注文した食材は基本的にカットや味付けされずに届くため、届いた食材の鮮度を自分で確かめることができます。さらに自分で野菜等をカットし調理を行うので、保存料や添加物が入っていない安心感があります。夕食のメニューを一から考える時間や買い物に行く手間を省きながらも、自宅で調理した出来立てのものを食べることができます。野菜を使ったメニューが多く、時短だけでなくミレニアル世代が気にする健康面も気を遣ったメニューが人気です。カロリーの表示や企業によっては塩分等も表示しています。また、ミール・キットの市場が広がるにつれて、有名シェフとのコラボレーション商品などの販売を行い、差別化を図る企業もでています。 ミール・キットは一人当たり10ドル前後と決して安くはありませんが、外食することを考えればリーズナブルですし、出来合いのものにはない、フレッシュさがあります。また、家族構成に合わせて数量の注文ができるため、食材を無駄にしたり、廃棄する心配もありません。ミール・キット市場を牽引するブルーエプロンでは、2名分のプランと、4名分のファミリープランを用意しています。2名プランでは、1名1食9.99ドル×2名分を週3回まで配達してくれます。メニューは週替わりで6種類から選べます。ファミリープランでは、1名1食8.74ドル×4名分を週2回または4回まで配達してくれます。HP上でもメニューの紹介に合わせて、調理方法、調理時間だけでなく、カロリーやメニューに合うワインの紹介もされており、利用者の声もフェイスブックを利用して掲載されています。 ブルーエプロンHP:https://www.blueapron.com/ これまでミールソリューションとして、RTE(レディー・トゥ・イート:そのまま食べられる)、RTH(レディー・トゥ・ヒート:電子レンジで温めて食べられる)、RTC(レディー・トゥ・クック:肉や魚に下味がつけられているなど、食材の下ごしらえがされている)、RTP(レディー・トゥ・プリペア:調理するための食材がセットされている)が各SMで販売されてきました。今年オープンした365バイ・ホールフーズ・マーケットでも調理済みや半調理済みの食品が多く取り扱われています。現在、ミール・キットはブルーエプロンを代表とするような専門業者が主流ですが、今後SMやレストラン業界もミール・キット市場に進出してくるとみられています。 外食、中食、内食の垣根を越えた競争が拡大している中で、食事の在り方がどのように変化していくのか、ますます注目です。

2016年9月時点でのミールキットの市場規模は4億ドルでしたが、食品市場調査会社であるパッケージド・ファクツ(Packaged Facts)社によると、現在は5倍以上の約22億ドルにまで成長しているとのことです。また、世界的な金融会社のゴールドマンサックス(Goldman Sachs)社によると、2020年までには50億ドル規模にまで成長するだろうとのことです。

ミールキットは調理済みの食材とレシピがセットになったものですが、以下のようなメリットがあることから右肩上がりの成長を続けています。

・買い物に行く手間が省ける(オンラインの場合)

・献立を考える必要が無い

・調理の手間がかからず、レシピに従いレストラン並みの料理ができる

・今まで作ったことのない新しいメニューを体験できる

・食材の無駄が出ない

そもそもミールキットというビジネスは、2007年にスウェーデンのMiddagsfrid社が新しいビジネスモデルとして始めたサービスで、アメリカでは2010年にスタートアップ企業のゴブル(Gobble)社がサービスを開始しています。2012年からドイツ生まれのハローフレッシュ(Hello Fresh)社をはじめとして、プレーテッド(Plated)社、ブルーエプロン(Blue Apron)社、2013年にはホームシェフ(Home Chef)社が参入し、それまでの需要の小さいニッチな市場から一大ミールソリューションビジネスとして注目を浴びるようになりました。

世界最大の調査会社であるニールセン(Nielsen)社が先月発表したデータによると、過去半年間でアメリカ国民の9%がオンラインあるいは店舗においてミールキットを購入したということです。これは総世帯数にして約1,050万世帯が利用したということになります。その中で、オンラインによる購入は約6%を占めています。

また、今後半年の間にミールキットを購入したいと考えているアメリカ国民は約25%で、総世帯数にして約3,010万世帯になるということで、今後もまだまだ伸びる市場と考えられています。

データ分析企業であるアーネストリサーチ(Earnest Research)社によると、2017年1年間でアメリカのミールキットの売り上げは前年比で40.7%伸びたということです。

以下の表は2018年2月時点の市場シェアをまとめたものです。(2017年9月時のシェアとの対比)

※2018年2月時点 ミールキット市場シェア

順位企業名2018年2月2017年9月前回対比
1ハローフレッシュ(HelloFresh)36.00%31.30%4.70%
2ブルーエプロン(Blue Apron)35.00%40.30%▼5.30%
3ホームシェフ(Home Chef)13.00%10.50%2.50%
4サンバスケット(Sun Basket)10.00%7.90%2.10%
5プレーテッド(Plated)7.00%5.70%1.30%
※Earnest Research社データ。ハローフレッシュの数値は、3月に買収したオーガニック・ミールキット企業のグリーンシェフ(Green Chef)との合算数値です。

上記の表からは、オンラインによる定期購入(サブスクリプション)形式のビジネスを展開するブルーエプロン社が、大きくシェアを落していることが分かります。これまではミールキット購入の大半がオンラインによるサブスクリプションでしたが、前述のニールセン社によると、この1年でスーパー等の店舗内での購入が26.5%伸びているとのことです。2017年は1億5,460万ドルの売り上げ規模となっています。2017年に店舗で販売された食品類(生鮮、乳製品、冷凍食品等)の売り上げは0.1%落ちて、3,740億ドルだったことに比べ、店舗内でのミールキットの存在感が増していることがわかります。

店舗内でのミールキットの需要が伸びている背景には、過包装されたキットから出る廃棄物の問題や、数日から数週間先の受け取りスケジュールを決めなければならないなど、実際に受け取ることへの煩わしさがあるということです。こうした消費者の変化がブルーエプロン社の業績に影響したようです。また同社は昨年6月にミールキット企業として初めてIPO(株式公開)をしましたが、大きく株価を下げてしまいました。その原因として同社のIPOを行ったタイミングと、アマゾンによるホールフーズ買収およびアマゾン独自ブランドのミールキット開発に関するニュースの発信されたタイミングが重なったことも影響したとみられています。

今年の3月には世界最大の小売企業であるウォルマート(Walmart)が独自ブランドのミールキットを250店舗で販売開始し、年内に2,000店舗まで拡大すると発表しました。ウォルマートの動きを受けて、多くの企業が独自のミールキットへの取り組みや既存のミールキット企業との提携を進めるという動きが活発になっていますので、ご紹介します。

以下は主な企業のミールキットに関する最新の取り組み状況をまとめたものです。

アルバートソンズ(Albertsons)昨年独自の調査により、顧客の約8割がミールキットの購入をしたいという結果を受け、業界5位のプレーテッドを買収。今年4月に、傘下企業での販売を年内に2,000店舗まで拡大すると発表した。
クローガー(Kroger)昨年9月に独自ミールキット’プレップ・ペアド’の販売を開始し、今年4月には、業界3位のホームシェフの買収を発表。
コストコ(Costco)今年の5月に、業界2位のブルーエプロンのミールキットを一部の店舗で、従来よりも30%値段を下げて販売すると発表。 コストコは、シェフド(Chef’d)のミールキットも既に販売を開始しており、本格的なミールキット市場への参入を始めた。
ショップライト(ShopRite)3月に独自ブランドの多国籍(タイ、韓国、モロッコ等)のグルメミールキット’Chef’s Menu’を発表した。 すべての食材はUSDA(アメリカ農務省)の認可を取得した安全で高品質なものを使用している。
アホールド・デレーズ(Ahold Delhaize)6月に入り、業界1位のハローフレッシュとの提携を発表。傘下企業のジャイアントフード(Giant Food)とストップ&ショップ(Stop & Shop)581店舗での販売を開始すると発表した。

他にも自社開発のオリジナルミールキットを販売している主な企業として、アメリカ中西部で存在感を増しているハイヴィー(Hy-Vee)やマイヤー(Meijer)、東海岸でウェグマンズ(Wegmans)と人気を二分しているパブリクス(Publix)、テキサス州でシェアを独占するエイチイーバット(H.E.B.)および同社アップスケール店舗のセントラルマーケット(Central Market)等が挙げられます。

錚々たる企業がミールキットの取り組みを開始し、更なる成長が予想されているミールキット市場に、今後も注目していきたいと思います。

(2018.06.11配信)

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